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佑衣ちゃんの表情が、ガン!と絵に描いたようにショックを受けたものになる。
「違うもん!」
「え、うわ、ちょっ」
「佑衣のが先に約束してたもん!」
ぷるぷる震えながら目に涙を溜めて言い返されて、しまった大人げなかったか、と狼狽えた。
いやしかし。
だからといって真琴さんどうぞってするわけにもいかないし。
おろおろしながら真琴さんに助けを求めて、驚いた。
彼女は彼女で、また顔を真っ赤にしてぷるぷると震えて泣きそうな……。
いや違う、怒ってる、これ。
怒ってるっぽい。
「さっきから、恥ずかしいことばっかり……っ」
「ま、まことさん?」
「なんでもかんでもほいほいぺらぺら喋るのは止めてください!」
「す、すんません!」
慌てて謝ったけど、イマイチ怒られた理由がわからなかった。
なんでだ、そんな恥ずかしいことばっかり言ったっけ。
あ、ちゃんとプロポーズする前に人前で嫁さんとか言ったから?
「えらい賑やかやなあ。集まってや、お雑煮出来たよ」
台所からお盆を持って出て来たお姉さんに、佑衣ちゃんが泣きつきに行く。
慌てふためく俺とぶるぶる震えて怒ってる真琴さんを見て、佑さんとお父さんがゲラゲラ笑う。
凄く賑やかであったかい、仲の良い家族で。
佑衣ちゃんが生まれたばかりだった『あの時』、真琴さんが全て飲み込んだ気持ちが少し、わかった気がした。
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