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「そうや、篤くんと連絡とっとん?」
真琴さんの顔から一瞬表情が消えたのは、食べ終えた雑煮の椀を集めながら真衣さんがそう言った時だった。
「いや。もうずっと取ってない、かな」
「そうなん? 高校まであんなに仲良かったくせに」
「そうでもないよ」
口元にもう一度笑みは浮かんだものの、湯呑を撫でる手が少し忙しなくなって、最後にはテーブルの下に隠してしまった。
それを見て、篤というのが例の幼馴染のことなのだとすぐに悟った。
「しょっちゅう遊んでたやん! 篤くんなあ、デキ婚らしいよ!」
「は……、デキ、婚?」
「そう! びっくりやろ。昨日から帰ってきてんのよ。後で顔見に行っといで」
今度こそ取り繕う余裕もない様子で、真琴さんの血の気が下がるのを見た。
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