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「二階ですか?」
真琴さんの手を引きながら、早足で階段を上がる。
彼女が少し戸惑ったような声で、上がってすぐ、右側の扉だと教えてくれた。
木製の、洒落た扉を開けるとグリーンと白で統一されたシンプルな八畳くらいの広さの部屋が広がる。
ぱたん、と背中越しに扉を閉めると、真琴さんが俺の顔を見上げてぽかんとした表情で言った。
「陽介さんが、そんな怒った顔するの、初めて見ました……」
「怒ってますよ、俺はずっと前からはらわた煮えくり返ってます」
血が全部脳に集まったみたいに、頭が熱い。
血管が浮いて痙攣するような感触までこめかみから伝わってくる。
篤って男だけでなく、本当は真琴さんの家族にも腹が立って仕方なかった。
デキ婚?
ふざけんな。
自分のしでかしたことなんて大したことだと思ってなくて、きっと何事もなく六年過ごして。
真琴さんの家族だって、なんで誰一人、気付かなかったんだ。
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