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真琴さんが、きょとんとした顔をする。
それは初めて打ち明けてくれた時と同じ顔で、それから徐々に口許が緩んで、ありがとうございます、と笑った。
「なんかそう言ってくれそうな、気はしてました」
「俺だけじゃないっすよ、誰だってそう思います」
「そうかな。でも陽介さんならそう言うかなって思えた。だから話してもいいって思ったのかな」
ぽつ、と呟いて、真琴さんが何かを思い出すように俯いて視線を彷徨わせる。
「あの時、佑衣が生まれて喜んでる皆に水を差したくないというのもあったけど、本当はすごく、知られるのが怖かったんです。
あ、あんなことされそうになった自分が恥ずかしくて、見た目男みたいなのに、とか。時間が経てば経つほど、言えなくなった。誰かに話してただ『怖かったね』って流されて、後は何もなかったようにされるのも嫌で、だからと言って大事になって家族や隣に知られるのも嫌だったし。
だからこの家を出るまでは、かなり息苦しかった。少しのボロも出せなかったから」
それから、きゅっと眉根を寄せ、握りしめた拳が震えた。
「……くそ。悔しい」
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