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その夜、陽介さんは言葉の通り僕を部屋まで送ってくれて、僕が欠伸をするまで店で酒を飲んでから、帰って行った。
部屋で一人、ベッドに横になると今日一日のことが思い出され、居たたまれなくて手で両目を覆う。
多分、見透かされた。
僕は少し、自棄になりかけていたのかもしれなかった。
いや、自棄というよりは焦りのようなものかもしれない。
篤が全部綺麗に忘れて生きていたことが、悔しくて仕方なくて。
僕も早く、前に進んでしまいたかった。
それを、陽介さんに見透かされていたのだと思う。
もしもそうなら、僕は随分無神経なことを言った気がして自分で自分が恥ずかしかった。
「……でも、じゃあ。どうすればいいんだよ」
大事にしてくれているのは、充分わかってる。
だからこそ、早く応えられるようになりたい。
それは、やっぱりただの焦りなんだろうか。
わからない。
そして僕には、こういうことを話せる人間が、誰もいない。
普通なら、女友達とかそういう存在に頼るのだろうけれど。
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