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さあ帰ろう、と靴を履こうとしている時になって、急に母親に台所に手招きされる。
「すみません、ちょっと」
「大丈夫っすよ、待ってます」
玄関で陽介さんだけを残して台所に向かうと、姉もそこに居た。
「佑衣は?」
「寝ちゃった。パパも来とったしまこくんも来るって、夕べはしゃいで深夜まで起きてたから」
「お父さんは今自治体の挨拶周り行ったんよ、見送れなくて悪いって」
「え、あんな酔っぱらった状態で?」
「朝の神社の年始回りでも酒飲んどったよあの人は」
「……相変わらず」
この辺りは、古くからこの辺りに住む家が多くて、自治体もご近所付き合いも古い習わしが残ってたりする。
だからお正月は案外忙しい。
で、なんで僕は台所に呼ばれたんだろうと、二人の手元を見てわかった。
四角いお重に、おかずを詰めている最中だった。
「あんたのことやから、どうせ食べたり食べなんだりしてんやろ。持って帰り」
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