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新聞紙に厳重に包まれてから紙袋に入れられた重箱を手に玄関に戻ると、そこに佑さんが立っていて、玄関のドアが開いていた。
「あれ、陽介さんは?」
声をかけて振り向いた佑さんの顔が、一瞬すごく、怖い顔に見え驚いて目を見開く。
「え……どうかした?」
「ああ、いや。陽介なら今」
その表情はすぐに消えたけど、何か珍しく狼狽えている気がして首を傾げた時だった。
「あ、真琴さん」
ドアの外にいたらしい。
陽介さんが笑ってまた玄関に入ってきた。
「どうかしたんですか?」
「何がっすか? あ、それなんですか」
「母と姉が。おせちを持たせてくれて……」
「まじっすか。やった、新幹線でいただきます」
ぺこっと姉と母に向かって陽介さんが頭を下げる。
「新幹線でコレ広げる気ですか」
「いいじゃないすか。手作りのおせちなんて中々食えないし、美味かったです」
確かに、母は料理はめちゃくちゃ上手いけど。
ストレートに褒められて嬉しかったのか、もう一つ重箱に入れて来るとか言い出したので、慌てて家を後にした。
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