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ひゅる、と冷たい風が吹いて寄り添うように身体の距離も近くなる。
二人同時に近づいて目が合うとほわっと温かくなるような笑顔が浮かんだ。
「すみません、夕方の新幹線だなんて嘘ついて」
「大丈夫っすよ、きっと元旦の夜なんて空いてますって」
そうしてまた、僕の手を引いて歩きはじめる。
手を繋ぐことには、いつのまにかすっかり慣れた。
キスにも慣れた。
それ以上のことも、ようはきっと、『慣れ』なんだろう。
大丈夫、ちゃんとわかってる。
今触れているこの手は陽介さんのもので、彼は僕に乱暴なことはしないとちゃんとわかってる。
だから、きっと大丈夫だ。
「……神戸観光でも、しますか?」
「え、今からですか? したいけど、新幹線の最終って何時でしたっけ」
「遅くなっても、どこか……泊まれる、とこ、とか」
しどろもどろにそう言うと、「え」と戸惑った小さな声が聞こえた。
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