誘惑

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完全に拗ねた口調になってしまったことが、あまりにも格好悪くて目を反らした。 だって会わせたくない慎さんの視界に入れたくない、あんな奴。 奴の視界にも入れたくないし。 それを、怖いのを我慢してまで、と俺は思うのに。 「篤と向き合おうって意味じゃないですよ。僕だって顔なんか見たくないですが」 「じゃあ」 「いつまでも怖い怖いと逃げて居たくない。前に進みたいんです」 女物の服と靴、化粧。 それらを示すように、少し手を広げて彼女は自分の姿を見下ろした。 「だから今日のこれは、第一歩です」
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