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「最近、佑さんが」
「はい?」
「僕が結婚式で女の格好するのが嫌だって言ったら、行かなくていいって言うんです。なんなら当日インフルエンザだとか俺が連絡してやるって」
「俺もそれでいいと思いますよ」
佑さんに大賛成だ。
やむを得ず欠席の理由なんて、作ろうと思えばいくらでも作れるし、向こうも負い目があるはずだから何の文句もいえねーだろ。
そんな無駄な時間、作る必要ないと俺は思うのだが、彼女は少し眉を寄せ首をかしげて考えるような仕草を見せた後、言った。
「……行く。逃げたと思われたらいやだ」
多分、自分一人が引きずってるとか、相手に思われるのが嫌なんだろう。
その後はまた距離を置いてしまえばいいんだし、なんと思われたって慎さんが楽な方法をとればいいのに、結構、損な性格をしていると思う。
でも気持ちは痛いくらいに、わかる。
そうして、当日。
天気の良い、二月下旬の土曜日だった。
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