457人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃ、これ持って。中に化粧直しの道具も入ってるからね」
「は、はい」
「鼻がテカってきたらコレ使って」
「て、てかる? ……わかりました」
翔子からパーティ用の細長いバッグを渡され言われるままに頷いて、慎さんがよろよろとこちらに向かって歩いてくる。
ヒールに慣れてないのが丸わかりで、慌てて近づいて腕を取った。
「すみません」
「いえ、全然」
「……ほんとに変じゃないですか」
「綺麗です。傍にいるのも緊張するくらい」
「あ、貴方はなんでも『可愛い』『綺麗』って言うから」
「嘘は言えないっすもん、綺麗だから綺麗って言うだけで」
「そんなこと」
「あのさー。いちゃついてないでさっさと出ようよもう。私も今日は予定あるんだって」
目の前で「綺麗です」「そんなこと」を繰り返す俺と慎さんに翔子が呆れた視線を向けながら、メイク道具をバッグにざかざか詰め込んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!