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「なんで。理由なら俺が適当にお姉さんに連絡して……」
「僕はもう、十分隠れてきたな、と思って」
慎さんは、大きく深呼吸すると力の入らない手の感覚を確かめるように、両手を握っては開く、を繰り返す。
顔色は確かに悪いけれど思っていたよりもしっかりとした口調だったけど。
「これはいい機会だったんだ。もうそろそろ、向き合わないといけないと思いませんか」
「思いません」
全然、ちっとも思わない。
そんなに無理しなくても、俺はゆっくり慎さんなりに進めばいい。
俺の全否定がおかしかったのか、慎さんは呆気にとられた顔をしてから、気が抜けたみたいに破顔した。
「貴方は僕を甘やかし過ぎですよね」
「だって本当は会わせたくない」
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