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そう言われては、彼女を引き留める言葉は俺には思い浮かばなくて。
無言を納得として受け止めたのか、彼女はまた同じ質問をする。
「変ですか?」
「……綺麗です。きっと会場の誰よりも綺麗」
「まあまあ、とか、普通とか言われる方が緊張せずにすむんですが」
んなこと言っても、嘘なんてつけないし。
困ったように眉尻を下げ、もう一度深呼吸をして落ち着こうとする慎さんの手を握る。
やっぱり、ちょっと冷たくなっていた。
「幼馴染に会うのが怖い、すか」
「どうかな、怖いのは怖いけど……あまり実感がない。昔の顔しか覚えてないし。今は、この格好で知り合いもいるかもしれない場所に出てくのが怖い」
「お姉さんも一緒なんだし、落ち合うまで隣にいます。披露宴の間も、俺はロビーにずっといるし」
「はい」
「自信持って、背筋伸ばして」
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