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俺の服を握る、慎さんの手が震えていることに気付かなかった。
滑らかな首筋に舌を這わせると、びくびくと肩を強張らせる。
それを、首筋が敏感なのだと頭の中で都合よく変換して、短い息の繰り返しを聞きながら、肌を吸いながら辿って上がり耳の淵を舐めあげた。
瞬間、
「ひっ……」
と、空気を吸い込むような小さな悲鳴が耳に聞こえ、我に返る。
自分が今、何をしているのかを、鼻を擽る肌の匂いと視界に広がる榛色の髪に知らされ、冷水を浴びせられたようにすっと身体が冷えた。
「すんませっ……!」
慌てて捕まえていた肩を引きはがして一歩下がる。
腕の長さの分だけ空間が出来て、慎さんは握っていた俺のジャケットを離してゆるゆると自分の胸元に寄せていく。
その手が震えているのを見て、更に血の気が下がった。
「俺っ……」
「や……大丈夫」
いや、大丈夫なわけないだろ、何やってんだ俺。
慌てて彼女の顔を見る。
泣いているに違いないと思っていた俺は、彼女の熱を孕み潤んだ瞳に息を飲んだ。
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