457人が本棚に入れています
本棚に追加
「屈んで!」と言われて少し頭を下げると、ぼふっとタオルを被せられてごしごしと髪を拭いてくる。
若干乱暴なのは、さっきの俺の行いを怒っているからだろうか。
それでも、慎さんの方から近寄ってきてくれて、嬉しかった。
距離を置かれてしまっても仕方ない、また最初からだと覚悟したけれど。
「頭冷やすって、ほんとに水被る人がありますか。この真冬に」
ぽん、とタオルの上から頭を叩かれた。
タオルを首にかけ直して顔を上げると、目が合った。
「何、情けない顔してるんですか」
「……さっきは、すんません」
キスについ、夢中になって。
慎さんに何の気遣いもなく、暴走してがっついてしまって。
貴女に、怖がられたくない。
それが一番、俺には大事なことなのに。
頭を下げた俺を、彼女は怒るでもなく、苦笑いをする。
ただその表情が一瞬、すごく寂しそうに見えて戸惑った。
最初のコメントを投稿しよう!