夜と傷と、

7/26
前へ
/26ページ
次へ
結婚式なんてするもんじゃないな……というのが、披露宴に出席した結果の正直な感想だ。 高砂席などと一段高いところに座らされての、完全な見世物状態。 しかも新郎新婦は何かといえば着替えに一々席を立たねばならず、なんであんなに何度も着替えるんだ。 衣装を一つに決められなかったのか。 せめて洋装和装一つずつで十分じゃないのか。 ましてや新婦は身重のはず、あれでは体の負担にしかならないと思うのだが……それでも嬉しいものなんだろうか? 彼女は始終、幸せそうに笑っていた。 「あーっ、ええなあ! 私も式したかったなー」 と、姉が心底うらやましそうにため息をつく。 披露宴がお開きとなり、周囲が帰り支度にざわめき始めたところだった。 「わかった。次はちゃんと式がしたいって言ってた、って佑さんに伝えとく」 そう言って頷くと、姉が「えっ」と狼狽えながら、顔を真っ赤に染めた。 やっぱり、復縁は近そうだ。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

420人が本棚に入れています
本棚に追加