夜と傷と、

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「パウダールームは混み始めてたけど、お手洗はどうかな」 化粧室の方角を指差すと、姉が佑衣の背中を押しながら急かすように僕の横を通り過ぎる。 その後ろ姿に「僕はもう帰るから。またゆっくりね、姉さん」と声をかけた。 「ええっ?! ちょっ……ああ、もう!」 慌てて引き留めようとする声がしたけれど、聞こえなかったふりをする。 どうせあの二人は篤の両親の招待でこのホテルに一泊するのだ。 一緒に長居する羽目になってはたまったものではない、とロビーの中央に向かって陽介さんを探して進む。 さっきの会場の出口付近はまだにぎやかだった。 見送りは終わった様子だが、まだ親族や友人と会話をする篤の姿がある。 新婦はどこかで休んでいるのか姿は見えなくなっていた。
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