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一瞬の暗闇におびえたのは、最初だけで。
声ですぐに陽介さんだとわかると、途端に体の力が抜けて後ろに凭れ掛かった。
「すみません、遅くなって」
と、至極申し訳なさそうに僕に向かってそう言ったその声は、いつも通りの優しい声なのに。
「謝罪は必要ないって言ったはずだよな?」
塞がれた視界のままで聞いた篤に向けられたその声は、冷ややかに低くて本当に同一人物かと耳を疑った。
感情が読み取れなくて、首を傾けて手の隙間から斜め上を覗く。
まっすぐ前を睨む目は、ぞっとするくらい鋭くて。
静かな低い声は、懸命に怒気を押し殺した末のものだと、表情で気付いた。
「陽介さ……」
「何言われたって、今更許せもしねーのに。なんでお前の罪悪感解消に付き合ってやんねーといけねんだよ」
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