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会場に入ると、すでにほとんどのゲストは着席していた。
目立ちたくなくて、テーブルの間をコソコソと背中を丸めて通ろうとして、陽介さんの言葉が頭を過り意識して背筋を伸ばす。
改めて見渡すと、生花やリボンでコーディネイトされ華やかな空間が広がっている。
ゲストの人数も、一般的な披露宴よりも多いのではないだろうか。
並ぶテーブルの数に、キャンドルサービスとか大変だろうなと要らない心配をしてしまった。
これだけたくさんの人が居ては、きっと誰も僕が男か女かなんて関心はないし。
たまにすれ違う人から向けられる視線はあっても、わざわざ声をかけられることもない。
それはきっと、篤にも同じだろう。
ただ、僕の方が篤の顔を見て落ち着いていられるだろうか、とそれが怖かったけれど。
本当に、ギリギリの時間だったようだ。
席に着いて間もなく曲が流れて、会場全体の照明がおとされライトが一点に絞られる。
そこに、懐かしい幼馴染の顔を見た。
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