夜と傷と、

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あの頃は、悔しさや恐怖感がまだ強くて、幼馴染が変わってしまったようにも思えて、窓越しに顔を見るだけでぶつける場所のない憤りに襲われた。 それが今は不思議と、沸いてこない。 年月がそうさせたのも、あるかもしれない。 相対したわけじゃない、大多数対一人の状況でしかないからかもしれないが。 それだけでもない気がした。 新郎新婦を目で追いながら周囲に倣って拍手を贈る間。 今頃、ロビーで落ち着きなくうろうろと歩き回ってるんだろうかと、その姿を思うと、つい頬が緩む。 その後、式の間ずっと。 自分でも驚くくらい穏やかに、新郎新婦の姿を見ていることができたのは、きっとあの人のおかげに違いない。 そう思った。
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