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今朝、彼は約束の時間ぴったりに迎えに来てくれた。
『ハッピーバースデー、真琴さん』
いつも通りの顔でそう言われて、面食らった僕は謝るタイミングを見失った。
その後話をする気配もない陽介さんに躊躇いながらもついてきて、今に至る。
夜は、パークに隣接したホテルに泊まるのだという。
「あ、あれ。あのホテルです」
歩いている途中で、陽介さんが指差した方へ目を向ける。
外観の可愛らしい、女の子の喜びそうなホテルだった。
「可愛い」
「良かった。部屋から、ちゃんとパークが見えるとこにしてもらったんです」
つないだ手を、きゅっと握って口元に寄せる。
最近は不意打ちでも怖がらなくなっていたから、久々の”キスの合図”だ。
「……うん」
だけど、彼は微笑むばっかりでキスはしてくれなかった。
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