優しさを君の、傍に置く

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「……僕より、陽介さんのが」 「大丈夫ですって、こんなん」 「でも、こことかえぐれてる」 そう言って腕の傷に触ろうとして、躊躇って引込めた。 難しい顔をしているな、と思ってたけど、どうやら泣くのを我慢していたらしい。 一層くしゃくしゃに顔を歪めたかと思うと、遂にぼろぼろっと涙が零れて、俺は苦笑いをしながら指でそれを拭った。 「真琴さんは、結構、泣き虫っすね」 「……一回泣いたから、涙腺緩んでるだけ。すぐ元に戻ります」 「なんか、実家にいる猫を思い出します」 真琴さんの首の下を回った腕で頭を引き寄せながら、もう片方の腕を眺める。 確かに傷だらけだけど。 「普段愛想無いのに、遊んでほしい時だけ寄ってくるんすけど、それが可愛くてつい真剣に相手して段々ヒートアップして、本気の猫パンチくらったりして。こんな傷、しょっちゅうでしたよ」
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