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最初は殆ど一目惚れみたいなものだった。
バーテンダーとしてカウンターに立つ慎さんは、格好良くて綺麗で仕草もスマートで女の子が憧れるのもよく分かったし、男から見ても「いい男」だった。
すっと伸ばした背筋が綺麗で、あんな洒落たバーでどんな客とも気後れせず話し相手をするとこなんて、年下とは思えないくらい貫禄があった。
だから、未だに俺も敬語が抜けないんだろうか。
だけど、バーテンダーじゃない素の慎さんを少しずつ知って、そこからまた少しずつ、殻に皹が入って。
ぱらぱらと剥がれ落ちて、そこにいたのは普通の女の子だった。
繊細で臆病で、ちょっと融通が利かなくて、強がって見えて実はコンプレックスの塊で、素直じゃないけど優しくて、甘えん坊で泣き虫でちょっと癇癪持ちの。
傷ついた女の子だった。
どこに惹かれたかって言われるとわからない。
その全部が可愛く思えたし、守らなくてはと思った。
知れば知るほど、好きになる。
店では男で通しているから、誰彼構わず俺の恋人だと自慢するわけにはいかないけれど……いや、俺はいいんだけど彼女の仕事の障害になってはいけないし。
そんな秘密も、彼女の本質を知るのは俺だけだ、と思ったら優越感は生まれる。
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