優しさを君の、傍に置く

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「も……同じことの繰り返しだ、無理だ」 「んなことないっすよ、こんなん偶にじゃないすか。こんくらい、俺は全然大丈夫だって……」 「そんなわけない! いい加減貴方だって嫌でしょう?!」 「俺は嫌だなんて一度も言ってない!」 僕に向けてこんなに怒ったことは、今までないんじゃないだろうか、っていうくらい怖い顔をしていて、それに怖気づいたくせに素直に謝ることもできなくて、僕は更に言ってはいけないことを言った。 「貴方なら、こんな面倒な僕なんかじゃなくたってほかにもっと可愛い子を選ぶことだって……そしたら、こんな喧嘩することも」 そこまで口に出してから、しまったと気が付いてももう遅い。 ぴり、と空気が冷えた気がして俯かせていた顔を上げると、床に尻餅をついていたはずの陽介さんがもうベッドに乗り上げてきていて、片手で顎を掴まれた。 「そんで? 真琴さんは、『俺なんか』よりもっとイケメンの男を選ぶんすか」 そう言った陽介さんの顔が、怒っているようにも傷ついているようにも見えて。 言葉が出せなくなった僕の唇を、陽介さんがいつもより乱暴に貪った。
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