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余りの息苦しさに、胸を叩いて抵抗すると今度は引き剥がすようにして距離を置かれる。
「……優しくできそうにないんで、今日は帰ります」
無理やり抑えたせいか、少し震えた声だった。
「俺は絶対! 別れませんから!」
服が半分肌蹴たままの僕に、ぼふっと頭から毛布が被せられた。
僕はその毛布の中で、部屋を出て行く荒々しい足音を聞いていた。
「あー…………それは、まこっちゃんがわるい」
久々に来店した翔子さんが、余りの僕の覇気の無さに心配して客が引けるまで待っていて、部屋に泊まって話を聞いてくれたのだが。
事の流れを説明した僕に、彼女は容赦なく眉を顰めて、更に続けた。
「陽ちゃんがこれ以上ないってくらい、真琴ちゃんを大事にしてるのは傍で見ててもわかるのに。真琴ちゃんがそれを言うのはひどい」
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