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怖いのを我慢して、震えてすすり泣く。
その身体に触れ続けることが、どれだけ怖かったか。
彼女は知らない。
いつまでも震えが収まらなかったら。
泣くばかりで、感じてくれなかったら?
発作的に振り払おうとする手をその都度捕まえて、宥め続けるしかできなくて。
俺のことも、怖がるようになったらどうしよう。
それを思うと俺も怖くて、胸が痛かった。
だけど、彼女の涙を理由に止めたらきっと、余計に泣かせる。
だから、俺は彼女が泣いても暴れても、絶対途中で止めなかった。
彼女が俺のために、勇気を出して飛び込んでくれた夜だから。
長い長い時間をかけて
貴女の身体が桜色に染まったとき
泣きたくなるほど嬉しかったことも
貴女は知らない。
二人で痛みを乗り越えた
この夜は、俺の宝物だ。
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