優しさを君の、傍に置く

9/40
前へ
/40ページ
次へ
「……あの、真琴さん?」 「腕、出して」 布団に収まったのを確認したからか、顔の赤味は収まってきたけれど、今度は拗ねたような凹んでいるようなそんな顔だ。 言われるままに、腕を差し出したが。 「別に、たいして痛くもないっすよ」 「そんなわけない。消毒もせずに寝たでしょう、化膿したらどうするんですか」 どうやら、薬品の匂いは傷口を消毒してくれたらしい。 普段救急箱なんか開けることないから、消毒液なんてものが入っていたことも覚えてなかった。 真琴さんは相変わらず、絆創膏を貼ろうと色々向きや大きさを考えているみたいだが、どう貼っても傷が粘着テープのところに当たる。 唇を噛みながら、ああでもないこうでもないとしている姿は可愛いけれど、さっきの涙が気になって。 「貼らない方が、渇いてすぐ治りますって」 「でも」 「それよりもうちょっと、だらだら寝ませんか」 手を取って、ベッドの中に誘った。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

497人が本棚に入れています
本棚に追加