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隣の席から、こそこそと話しかけられて耳をそばだてる。
「ねえねえ、あれ、ひなちゃんのパパ? すっごくかっこいいね」
「違うよ、ママ!」
えっ、と驚いて杏奈ちゃんが後ろを振り向いた。
それからまた、こそこそと声を掛けられる。
ちゃんと集中しないと、後でママに怒られるのに。
「嘘だあ、背も高いし男の人でしょ? すごく綺麗だけど」
「ママだってば。パパはもっとデカい。たぶん弟の方に行ってるから、後で交代しに来るよ」
まあ、間違えるのも無理ないけど。
私のママは、すっごく美人だけど背が高いし男っぽい格好しかしないから、よく間違えられちゃう。
ママも、一度で女の人だとわかってもらえたのはお腹が大きい時だけだったって言ってた。
「陽菜ちゃん、あんまり似てないね」
「うるさいなあ! ほっといてよ、私はパパに似ちゃったんだから仕方ないの!」
ママは、パパの顔の方が好きだって言ってたもん!
ほんわか、ほかほかするからって。
「高見さん! しゃべる余裕あるなら、前に出てこの問題解けるわね?」
「はいっ!」
突然先生に指名されて、慌てて立ち上がる。
もー!
杏奈ちゃんが話かけるから!
算数苦手なのに!
後ろを見ると、ママがちょっと怒った顔をしていた。
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