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ママは、暗くて僕の首輪から鎖が外れていることに気づいていなかった。
「ごめんね。ゴン。今日は散歩に行けそうにないの。」
ママは僕の前にごはんを置いて、家の中へ入ってしばらくして出掛けて行った。
僕はいつものように穴を掘って、ごはんを埋めた。
『……何やってんだい。バカ犬?』
『ダイエットだよ。』
『はあっ?』
ミーコは心底呆れた声を出した。
『首輪を抜けやすくするんだ。そしたら。いつでもおじいちゃんを探しにいけるでしょ。』
ミーコは苛立つように長いシッポを振った。
『バカ犬。間抜け犬。アホ犬。』
「ねぇ、ゴンちゃん。ミーコ見かけなかった?」
隣のおばさんがお皿を片手に持ってやってきた。
『ミーコなら』
塀を見上げたらミーコはいなかった。
「はい、ゴンちゃん。」
おばさんは、またもや黒焦げになった肉を僕の目の前に置いた。
「ミーコをみかけたら教えてね。」
おばさんは、そう言うと帰って行った。
香しい肉の香りに僕の鼻はひくつく。
『またあの人、焦がしたのね。』
いつのまにか、ミーコは塀の上に戻っていた。
『家に帰らないの?ミーコ』
『気が向いたらね。それより早くお食べな。』
『でも』
『それを食べただけで、首輪が外れなくなるわけないさ。』
僕は、ごくりと唾を呑み込んだ。
『うん。』
ばくり、と久しぶりの肉に食いついた。
焦げてたけど、美味しかった。
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