1人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は公園の前にやって来たんだ。
けど、朝の公園は誰もいない。
僕はいつもの場所に座って待った。
『僕が来るのが早かったのかもしれない。もう少ししたら、おじいちゃんが来るかもしれない。』
空には厚い雲がかかって、どんよりと鉛色になった。
ぽつりぽつりと雨が降った。
雨の日はゲートボールが中止。
でも、僕は待った。
おじいちゃんがくるのを。
『……バカ犬。』
『ミーコ。』
『なにしてんだい。バカ犬。』
『あのね、おじいちゃんを待ってるんだ。』
『…………。』
『あ、でも雨だから公園じゃなくて碁会所の方かな。』
『……碁会所にはいないよ。』
『じゃあ、家に戻ってきてるのかな。』
僕は立ち上がった。
『よくお聞きバカ犬。おじいちゃんは倒れて病院にいるんだ。』
僕はミーコをじっと見た。
『昨日、八百屋さんで倒れて救急車で運ばれた。』
『嘘だっ!!嘘だ!嘘だ!!』
僕は喚いた。
『バカ犬っっ!!』
ミーコが一喝した。
僕はミーコの声を背後で聞きながら、家まで全力で走った。
『嘘だ嘘だ嘘だ!ミーコは嘘を言ってるんだ!家に帰ったらおじいちゃんはいるんだ!そしてそして一緒にお散歩に行くんだ!!』
最初のコメントを投稿しよう!