『誰かが誰かを殺す時』

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 岩城の工房に戻ると、俺が住んでもいいと言われた小屋には、電気がきていない事に気が付いた。荷物から懐中電灯は出してみたが、ここでは電池を購入できない。 「ロウソクって持っていたっけ……」  ここまで、辺鄙だとは思っていなかったが、ロウソクは一本だけ持っていた。  水道はあって、水はどうにか出る。顔を洗うと、寝袋を出した。  翌日、早朝から山へ向かい、粘土の切り出しを早めに開始した。ここでは、電気がないので、日の出と一緒に行動を開始しないと、すぐに夜になってしまう。一輪車で、十回程往復すると、今度は粘土を練ってみた。  これは、岩城のようにはいかない。何度も試行錯誤していると、後ろで岩城が見ていた。 「見た目よりも、頑張るものだね。上手になった」  まだそのまま使えないが、だいぶマシになったという。  岩城は、皿やコップを干していた。明日あたりから、奥の窯で焼き始める予定らしい。 「俺も、皿を造りたいです」  自分の皿に料理を並べてみたい。 「いいよ。ここに居るうちに焼いてみるといい」  本当の弟子であったならば、岩城もこんなに優しくはないであろう。 「はい!」  でも、岩城の言葉に甘えて、皿とコップを焼いてみたい。  目標が出来たので、必死で土を練っていると、岩城が何かの資料を持ってきた。  俺が資料を手に取ると、この島の歴史が綴られていた。この島には、昔、工場があったらしい。島の反対側で、武器のようなものを製造していたとある。敗戦により、工場は使用されなくなり、今は廃墟となっている。  この工場の廃墟は気になる。  でも、小さい島と言っても、反対側に行くには島を半周するか、山を越えなくてはいけない。  島の外周する道は、島民も多く使用していた。民宿もあるので、また邪険にされるであろう。 「山越えするか……」  そんなに高い山ではないので、どうにかなるだろう。  問題は時間であった。ここで三時まで働き、山越えし廃墟を見たら、夜になってしまいそうであった。廃墟で一晩過ごし、早朝に又戻ってくる。地図を見ながら、距離を計算してみた。山でなかったのならば、問題なく帰って来られる距離であった。 「行くか」  とにかく、工場の廃墟は気になる。この島に、二人の身元不明が流れ着いている。遺体の状況から、長く漂流していたわけではなさそうであった。
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