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この島の周辺は、漁港はあるが、大きな船はやって来ない。身元不明のままだということが、かなり気になる。
三時になると、岩城から調査に行ってもいいと許可を得た。俺はリュックに装備を詰めて、裏から山に登り始めた。
山は見た目よりも、険しかった。岩が多く、又、岩が崩れる。
時計を見ながら、進んだ位置を確認していたが、中々到着できなかった。ルートを考えながら進んだせいもあって、六時になって、やっと目的の工場の、跡地らしき場所は見つけた。
「……疲れた」
大きな岩の上で、腰を降ろすと汗が滴って落ちていた。
この工場は、船で資材を搬入し、製品も船で搬出されたと思われる。島なのだから、当たり前なのだが、工場から山に向かう道は無かった。
工場の横に、宿舎と思われる、二階建ての家が並んで建っていた。宿舎は木造ではなく、石でできていたので、屋根は朽ちて落ちても原型は留めていた。
宿舎の、壁の岩に植物が貼り付き、何かの遺跡のようになっていた。
海まで出てみると、島を一周する道が、宿舎の横に伸びていた。ここも廃墟ツアーなどで使用されているのかもしれない。手作りの案内板が、道端にたっていた。
山を登り降りするよりも、やはり外周を走った方が早かった気もする。でも、山の中の廃墟は、道からは遠い。
「写真、撮っておくかな」
日が落ち切らない内に、写真を撮っておこう。宿舎から始まり、工場まで行くと、日が落ちてしまった。
工場はかなり大きい。ここを調査するには時間がかかりそうであった。
俺は平らな場所を探すと、寝袋を出した。帰る時間を考えると、本当に時間がない。でも、俺はあまりに疲れたいたので、先に仮眠を取ることにした。夜更けに起きると、工場の内部で焚火をし、内部を観察してみた。
すると、森の中からガサガサという木の揺れる音がしていた。耳を澄ましていると、それは動物の足音ではなく、人間の足音のようであった。
俺は慌てて焚火を消すと、荷物を背負い工場の二階部分へと登った。二階の隙間から下を見ていると、懐中電灯で工場内部を確認する、数人の人影が見えた。
「焚火だ、誰かここに居たな……」
声が聞こえていた。懐中電灯が周囲を照らしたので、俺は物陰に隠れた。
「付近と二階、確認してみようか」
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