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民宿は、プライベートビーチのように、自分の浜を持っていた。その先の民宿は、浜とマリーナのような岬も持っていて、そこからイルカウォッチングや、くじらを見に行くツアーも出ていた。中でも、特に人気なのは、星空のツアーであった。ただ、一面の星だけの世界なのだが、何故か人気であるらしい。
安理子の溺死で、ここの船が疑われそうなものだが、ここは民宿と登録にはなっているが、高級ホテルのようで、金持ちしか宿泊できなかった。
しかも、この土地出身の網元の息子が経営していて、誰も逆らう事ができない。
俺は、段々畑を降りるように、民宿の壁まで降りたが、その先には進まずに、横の道に入った。
この民宿の壁の向こうは別世界で、ここの住人と交流もしていない。
サトウキビのような背の高い畑を抜けると、海になっていた。ここのビーチは民宿のもので、迂闊に入ると入場料を取られると、地図の注意書きにあった。
道は歩いても大丈夫だろうと、真っすぐに進んでいると、係員がこちらを見ていた。
「宿泊者以外は、ここに入らないでください」
係員に腕を掴まれて、引っ張られると、足が木の根に躓いてしまった。どうして、道に木の根があるのか。
手を付こうとしたが、左手に地図、右手を掴まれてしまっていたので、膝から転んでしまった。
「……痛い」
おまけに、係員が急に手を離したので、右手を付いて何かが刺さった。
右手を上げると、落ちていた石が刺さってしまっていた。刺さった石を手から外すと、血が滴って地面に落ちた。
「か、勝手に敷地内に入ったのが悪いのだからな……」
俺は、ハンカチも持っていなかった。腰にタオルを撒いていたので手を押さえたが、それでも、血が止まらなかった。
「地図を見たら、道路であったので。ここ町道になっていますけど」
「うるさい!」
膝は切れてはいないが、打撲にはなっているだろう。
「出て行きます」
手を押さえて、道を歩き敷地内という所は出た。
門の前で、タオルを外すと、血が絞れそうなほどになっていた。
「血の付いた汚い手で、門に触るなよ!」
真っ白な門に、民宿の名前が書かれていた。百舌鳥は、どこの民宿で働いているのだろうか。
俺は、背のリュックからタブレット端末を出すと、一部始終を書いて、昴に送信した。昴は眠っているので、何もできないが、目が覚めたら、ここの民宿を調べるであろう。
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