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本当は心臓が破裂しそうなほどドキドキしていたけれど、わたしは毅然と振る舞った。
「そうです。わたしは王の娘、ルシア=エンペルージュ。銃を向けるのは、王に向けるのと同義」
そう言うと、硬直していた警備隊長は弾かれたようにくずおれて地面に膝をつき、声を震わせた。
「申し訳ございません! 姫殿下とはつゆしらず、とんだご無礼を! どうかひらに! ひらに」
警備隊長には悪いことをした。彼は自分の職務をまっとうしているだけだ。事実、カイトはまごうことなく、国家転覆をもくろむクーデターの首謀者なのだから。
「かまいません。……そこの彼はただの旅人です。護衛とはぐれて困っていたわたしにいたく親切にして下さいました」
ちらりと下を見ると、カイトの困惑の視線が絡んだ。わたしはカイトから視線をそらした。
「警備隊、このまま王都の城まで護衛をしてください。……恩人の彼に助けていただいたお礼をしなければなりません」
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