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「……わかったよ。怪我した女の子1人砂漠のど真ん中に置いてくわけにはいかない」
わたしはホッと息をついた。カイトが焚き火に乾燥した木の枝をくべる。
「セシルもついてないな。キャラバンで砂漠を渡っている最中に盗賊に襲われ、仲間とはぐれたあげく怪我なんて。おれがいなきゃ死んでた」
カイトの言うことは大げさじゃない。毒サソリに刺されそうになっていたところを、通りすがりのカイトが助けてくれた。
「あなたは命の恩人です」
そう言うと、カイトの表情はほんの少し曇った。
その理由を……わたしは知っている。彼はこれから王都で人を殺そうとしている。
クーデターの首謀者だ。王都中に貼られた貼り紙でも、新聞でも彼を見た。烏の濡れ羽色の髪に、優しげな瞳。反逆者には見えないほど温和な表情。
王都まではあと40キロほど。彼を町に近づけてはいけない、そう思ったわたしは彼に“一緒にいて”とお願いした。
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