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「どうしていなくなったのですか?」
「……母が奴隷商に売ってしまった。おれと病床の父を養うために。妹は綺麗な金の髪をしていたから高く売れた」
このあたりの人の98%くらいが漆黒の髪をしている。時折突然変異で金の髪が生まれるのだ。
「セシルも綺麗な金の髪だね」
「……わたしのこと、売らないで下さいね」
「売れないよ。君はもう十代後半だろう? 高く売るには年を取りすぎた」
ラクダの上からカイトのターバンを小突くと、カイトは「ごめん」と笑った。
「セシルは兄弟は?」
「年の離れた姉が1人。優しい姉です」
昔はいつも、姉の後ろをついてまわった。初めてラクダに乗ったのも、姉の後ろだった。夜の砂漠を星空の下、探検した。
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