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ラクダで揺られながらぼうっと昔を思い出していたわたしの口元に、カイトが水筒を差し出した。
不安な気持ちはすっかり見透かされてしまっていたみたいだ。
「ありがとうございます」
カイトから水筒を受け取って、一口だけ口にした。のどをほんのり冷たい水がすっと通りすぎて、気持ちよかった。
――…王都に向かってカイトとひたすら直進していたら、ふいに遠くから砂煙が見えた。
「まずいな。誰か来る。しかも大勢だ。セシルたちを襲った盗賊か、おれを探す王都の人間か……」
「……そんな。どうしましょう」
「このあたりに隠れられるところなんてない」
あたり1面の砂。大きな岩なんて無いし、草も生えていない。
「カイト……」
「セシルは顔を隠して伏せて、何も話すな。君だけは守ってみせる」
カイトは懐からナイフを取りだす。
「無茶よ! そんな小さなナイフ1本で!」
「それでもやらなきゃ、仕方がない」
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