幸せになりたい

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寛之さんの首元に額を寄せて、背中からは彼の体温を感じる。寛之さんの手は時折私の髪や指先に触れる。 信じがたいほど一気に縮まったこの距離感に戸惑う反面、二人には邪魔する物が無いということだと納得いく。 寛之さんが身動ぐタイミングで顔を上げれば、今日幾度となく重ねた唇を私は当然のように受け入れた。 「そろそろ帰るよ」 そう言いながら、何度も角度を変えて触れ合えば互いに名残惜しさが募る。 「仕事終わったらそのまま来るから」 ちらっと見た時刻は日付を超えていて、これ以上引き止めるわけにはいかなかった。 「うん…ご飯作って待ってる」 互いの綻ばせた表情を見つめて、二人で照れ隠しに視線を外す。 強く強く握り合った手の指は深く絡めて簡単に解けそうにない。 腰をあげた寛之さんに続いて立ち上がって、並んだ二人の身長差を感じて見上げれば強く引き寄せられて身体が揺れた。 「ダメだ、俺…。ダメだ、ガッツいてる」 身長差のせいで上から被さるように抱きしめられてぎゅっぎゅっと締め付ける力が増す。 「ぅう、苦し…」 逃げようとする私を逃がさない寛之さんとの攻防に、いつしか笑いが込み上げて二人で声を出して笑い合う。 「もう…本当に帰るよ。おやすみ、唯」 「はい、おやすみなさい。気をつけて」 名残惜しく閉まる玄関のドア。 引き寄せた幸せは明日へと続いていく…満たされた心は暖かくて、一気に明るくなった世界が眩しくて目を細めた。
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