それは、小さくて確かな衝撃

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数時間後、いつものアラームで目を覚ます。眼に映る景色は何も変わらない朝だけど変わってしまった自分の気持ちがくすぐったい。 短い睡眠でもベッドから起こした身体は重くなかった。 今日も唯と会うということに全く迷いもなく、まだ寝ているであろう唯に「おはよう」と犬のスタンプを送ったのは、俺なりの意思表示だ。 「長谷、今日は一日事務所?」 声を掛けられた方へと顔を向けて挨拶がてらに軽く手を挙げた。声の主の白石は同期で隣の課に配属されている。近寄って来たと思えば、俺の席の後ろのキャビネットの扉を開けてファイルを取り出す。 外出している隣の席に座るなり、新しい商品の仕様だとか製品についてのやり取りがひと段落して白石はファイルを閉じた。 「そういえば来週からの研修の資料メールで来てたろ、見たか?」 返事ついでにパソコンの画面を切り替えてメールの受信ボックスを開く。ダブルクリックして研修の案内の文書を画面に表示させた。 なんて事のない、新製品が出る時にはいつも行われている研修だ。2泊3日のスケジュールで中日には懇親会もある。 「これといって準備するものもないし…」 添付のワードを開いてタイムスケジュールを確認していく。今回は幾つかのグループに分かれて工場での工程見学や製造部とのディスカッションもあって退屈しそうにない。
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