それは、小さくて確かな衝撃

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グループ分けのメンバーが既に決められていて同行する顔ぶれは他営業所配属の名前が多くあり、パッと顔が分かる人はいなかった。 下へとスクロールさせていく中、見逃していた名前を目にして画面の中の矢印がぎこちなく動いた。 [製品部:林田沙月] ゆっくりと白石へと顔を動かす俺を察して白石の視線は俺から外れていく。 「お前知ってたの?」 「お前の方こそ、今気づいたのかよ」 林田沙月は年齢は一緒だけど、短大卒入社の彼女は俺たちの教育係。高嶺の花と呼ばれていた彼女と俺は苦い恋をしていたけれど、4年前の人事異動で沙月はアメリカ勤務になった。 「期限付きで戻ってるらしい。今日の飲み会は行くんだろ?」 自分の中ではすっかり過去の話になっているのに、案外他人の記憶には残っているものらしい。白石の視線が俺の左手にあるような気がして両手をズボンのポケットに突っ込んで椅子の背もたれに体重を預けた。 「いや、断った。今日は予定があるから」 意外と言わんばかりに目を見開いた白石に、この話は終わりだと伝えるように開いた文書を閉じていく。 ポケットの中の左手に過去の恋の感触は残っていない。
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