それは、小さくて確かな衝撃

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まだ動かない白石が何か言いかけた時にポケットの中が震えて、取り出したスマホは唯からのトークが浮き出される。 《電球買ってきました》 電球の画像も送ってくる唯に自然と口元が緩んでしまう。 「長谷、今彼女いる?」 白石に見えないようにスマホを傾けて唯に返事を送る。 『サンキュー。仕事終わり次第付け替えに行くよ』 「俺、結婚してるよ」 俺の送ったトークに既読がついて了解のスタンプが出た。 最初から唯と結婚していることを隠していない。新入社員で既婚者の俺は当時は好奇の目に晒された。だけど、それを逆手に取った恋愛をしていたのは事実だ。 「それはカモフラージュじゃん」 同期が結婚したり父親になる人が増えた最近では、実態のない結婚をしている俺のことを疑うヤツも多い。 「カモフラージュじゃねぇよ」 カチンと来た言葉に鋭い眼差しを向けた。 『晩御飯のリクエストありますか?寛之さんの食べたいもの作りますよ』 「沙月ちゃんから直接お前んとこにも連絡が来てるだろ?」 唯からの返事に心を奪われて始めていて、白石が邪魔で仕方ない。何で他人のことに一生懸命になってんだよ。 「今日本当に予定あるのかよ?何とかして時間作れないのか?」 『嫌いなものは無いよ。唯の一番得意な料理を食べたいかな?』 「時間作れたら…まあ、行けそうなら連絡入れるよ。それでいいだろ?」 白石にはうんざりだとばかりの表情をむけて就業時間の残りを確認した。
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