それは、小さくて確かな衝撃

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**** 仕事終わりの軽い疲労を感じながら足取り軽く、唯の部屋のインターフォンを押す。 「どうぞ…」 期待していた「おかえりなさい」よりもわかりやすく感情が漏れているその顔に釣られて俺も歯を見せた。 「うん。お邪魔します」 腹減った…と靴を脱ぎながら呟いて部屋に入れば、テレビ前のテーブルにはもう晩飯の用意が出来ていて、唯への愛おしさが募る。 「唯、先に飯食っていい?電球は後からやるよ」 仏壇前に一度座って挨拶をしてから、待っていた唯にスーツの上着を渡す。 「嫌いな物、無かったですか?」 「うん大丈夫。美味そう…いただきます」 最初に口を付けた味噌汁は美味かった。 「今日は何してた?」 メインであろう皿の肉を頬張れば、ニンニクの香りが鼻から抜けて食欲を増進させる。 「えぇっと、電球を買いに行く前に…友達と会ってました。高校からの仲良しで仕事が始まる前にちょっとだけ…」 「そうだな。仕事してると学生の頃みたいに、とはいかないね」 「そうなっちゃうの、寂しいです」 職種にもよるけど、休みが合わないとかで疎遠になることはある。眉を下げる唯は本当に寂しそうで、それがまだまだ学生気分の抜けないフレッシャーズだと思えた。
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