それは、小さくて確かな衝撃

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「最初のうちは覚えなきゃいけないことだらけだし、今までとは違う忙しさになるから、寂しさは感じないんじゃないかな?」 異業種だけど、営業の仕事はどこも似たようなものだろう。自分の経験でも最初は覚えることが多くて大変だった。 「そう、なんですね」 呟く唯の視線の先の壁に掛けてあるカレンダーを眺めていて、入社式前からの新人研修が数日後に控えていると言っていたのを思い出した。 「研修あるんだったよね?一から教えてくれるはずだから心配いらないよ」 唯は形ばかりのフォローに浮かない表情を浮かべていて箸が進まない。次第に考え込むようになり視線を落としていた。 「気疲れもするだろうから、いつでも連絡しておいで。仕事帰りに飯食いに行こう」 「え?!」 唯のリアクションの一つ一つが初々しい。これを余裕と呼ぶものなのか、俺がいるから寂しくないよと言いたくなるのをグッと堪えて、唯に向けて柔らかく微笑んで見せた。 「仕事ばっかりじゃあ息が詰まるよ?愚痴ならいくらでも聞いてやれるよ。ね、おかわりしていい?」 空の茶碗を持って立ち上がる俺に釣られて唯も立ち上がる。 「わ、私が!」 「自分でできるって。唯は食べてろよ」 炊飯器はすぐに見つけた。立ち上がった唯は座ろうとはせず側を離れない。 「寛之さん」 上目遣いに名前を呼ばれて、仕方ない素振りで唯の両手のひらの上に茶碗を置いた。
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