それは、小さくて確かな衝撃

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「えっと、高校からのクラスメイトで…と言っても大学は違うんですけど。あ、他にもいる友達とか今でも仲良くしてて…」 まあそうだろうなと想像はつくし、とアワアワする唯の背後で時野が一歩前に出て玄関のドアが閉まっていく。 「そんなのどうだっていいよ。電球持って来いよ、替えといてやるから」 ガチャンと音がして、狭さが際立つ玄関に寄り添う二人。 「え、いいよ…」 「こんな暗い中で話なんかできねぇし。ほら、持って来いよ」 「だって……」 「いーから、ほら!早くしろよ」 俺が替えるはずの電球を、他人が替えることになるとは想像していなかった。明るくなった玄関で二人のやりとりを傍観している俺を一瞥して時野は用を済ませるとあっさりと帰ると伝えた。 「トキ、ありがとう」 「おぅ。またな」 学生時代ってこんな距離感だったろうか?忘れていた純情に触れて下心丸出しの自分を恥じた。 「ひ、寛之さん…食事中にすみませんでした」 唯の手には電球の外装と一目でプレゼントだと分かる質のいい紙袋。電気の下の時野は小綺麗な身なりだった。 「いや、こっちこそ邪魔しちゃったね」 もう俺がここに居る理由が見つからない。行かないつもりで断った飲み会に今から顔を出すのも悪くないと思ってしまうくらいには卑屈になっている。 「唯ちゃん腹減ったろ?俺帰るからゆっくり食べなよ」 「え?」 大きな目が信じられないという様に瞬きを繰り返す。
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