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さっきまでの甘い余韻に浸っていたい気持ちに区切りをつける為に、寛之さんの使ったマグカップを片付けて再度お湯を沸かす。
台所に立ったまま書いたり消したりを繰り返してトキ宛にメッセージを送った。
《今日はありがとう。プレゼントのボールペンは素敵だけど、畏れ多くて私には使えないよ》
頭を下げるスタンプを送ると直ぐに既読が付いた。
《使えばいい》
散々悩んで送ったメッセージに返された返事は短い。
「使えないってば…」
私が愛用しているボールペンを知ってるくせに。
追い帰す形になってしまったことを怒っているのか、普段のトキより吹き出しは短い。
《そんな訳にはいかないよ。プレゼントされる理由がないもん!》
スタンプを選ぶ間にメッセージが届く。
《今、電話していい?》
勢いに任せメッセージを送ったのは私の方なのに、トキに待ち構えられていた格好になると少し弱気が顔を出す。
《いいよ》
メッセージを送って直ぐに着信音が鳴る。
「もしもし?」
肩に挟んで茶筒を傾けた。
『あの人は帰ったんだ?』
電話の声に動揺してお茶っ葉が大量に急須の外へ落ちた。
「なッ!!当たり前じゃない」
『ふーん。まぁこの時間っていうのもどうかと思うけどね』
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