点と点と、点 ーそれぞれの繋がる先に

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もしかして連絡するのを待ってたの?とは聞けず返事に困る。 『明日、時間ある?ちょっと話したいことがあるんだよね』 「いいよ」 そんなことぐらいならメッセージで充分なのに。 世間話をしつつ待ち合わせの時間を決めて、そろそろ電話を終える雰囲気の中でトキの声が硬くなってきた。 『あの…あのプレゼントさ、ウチの親父が送ったものなんだ』 トキは西日本を中心に幅広く広告媒体を扱う会社の社長の御子息。本人は穏やかな性格で目立つのが苦手なせいか、流行りの御曹司のはずなのに残念なほどスルーされていて、水泳部で無駄に鍛えた筋肉も宝の持ち腐れと揶揄されても気にしていない。 「え…?トキのお父さん?」 解いたリボンや重厚な外箱に視線が流れて、トキに誘われて就職試験を受けたことを思い出した。 運良く三次試験まで残り、幹部との最終面接手ごたえを感じて内定を獲得できると思い込んだ私は、誰にも相談せずに他の内定を断った。その後不合格を報されて慌てて今の会社の内定を獲得した。 後日、ときが社長である父親に私の採用を直談判してくれたと聞いた。断りをした中に私が希望していた会社もあって、責任を感じてしまったんだと思う。 「ホント困る…」 それこそプレゼントなんて貰えない。
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