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だから、期待や喜びを抑えきれない子供のように体全体でわくわくしているかれんに、俺は親のような気持ちで諭すことにした。
「あのなぁ、かれん。ここはいくら緩い坂と言ってもだな、チャリで下ったらスピードが出るんだ。それに先にはカーブ。曲がりきれなかったらそのまま……」
「怖いんだ」
ずばり、と言い当てられてしまう。
「バカ、そう言うんじゃ……」
反論をしようとするが、かれんは片方の口角を上げてにたりとしながら、母親が子供を見下げる時のような目で見返している。俺が怖がってることなんてお見通し、と顔に書いてあった。
「いいだろ別に。お前を乗せてたら、重くてバランスも取れないんだ。ただでさえ危ないってのに……」
「また重いって言った!! よーし、新太がその気なら……」
小走りでかれんが自転車の後ろに戻ってくる。ぎゅっと、また後ろから抱きしめられるが、何をしようとしているのだろうか。
「ハンドル握っといてよ」
かれんがそう言った直後に自転車が前進した。俺は何もしていないのに。
「ちょ、お前っ!?」
かれんが前進しようと地面を蹴っていた。少し自転車が進んだだけでも、もう既に下り坂に入ってしまい、俺は何もしていないのにも関わらず、のろのろと自転車が進み始めた。
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