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坂も下り終わって、ガードレールにぶつかりそうになりながらも、なんとかカーブも曲がりきることができた。生きた心地は全然しなかったけどな。
大きく弧を描いた道を進むと、またまっすぐな道に差し掛かった。その途中で、俺は自転車を停めた。
そこは、この近くで唯一砂浜がある場所で、昔は海水浴場として使われていたらしいが、今日は誰もいなかった。
砂浜の傍には駐車場があり、言わずもがなそこもがらんとしていて、そこに自転車を駐車することにした。
駐車場には公共トイレと、色あせた白いプラスチックのベンチ、それから自動販売機が一台ずつあった。中でも俺の視線は、自動販売機に釘づけになる。
ブーン、と音がなっている以上は稼働しているということ。こんな辺鄙なところに置かれてしまって、随分と汚れてしまっているように見えるが、小銭を入れれば買うことができるだろう。
とびっきり冷たいコーラが飲める。そう思うと尻ポケットの財布に手を伸ばしていた。
「ダメだよ新太。新しい飲み物買っちゃ」
しかし、それを制止する奴がいた。非難をたっぷり込めた目で見ると、かれんは口を尖らせていた。
「いいじゃねぇか、買ったって」
「ダーメ。出てすぐにコンビニでお茶買い込んだじゃない」
かれんの言う通り、自転車のかごに入れてある部活用のエナメルのバッグには、朝買い込んだお茶が確かに入っている。
「でもよ、この炎天下のせいで、もう温くなっちまってるよ。散々チャリこいだから、つっめたーーいコーラが飲みたいの!」
チャリをこぐのは俺なんだから、別にいいじゃないかと訴えかけてみるが、かれんはまるで鉄仮面みたいにぴくりとも表情を変えなかった。
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