あの時彼は2

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熱のせいで頭がぼんやりとして、顔が熱い。 なのに身体はぞくぞくして寒いのかなんなのかわからないけど震えがくる。 慎さんに散々忠告されて心配もしてくれてたのに、会いたさに全部無視して店に通い詰めて、罰が当たったのかも。 嘆きながらいつの間にか熟睡して、手から携帯がすり抜けてベッドの下に落ちていた。 その後慎さんが連絡をくれていたのに、全く気付かずに寝こけていて、妹の「お客さん来てるよ!」の声で起こされる。 重たい頭で辛うじて目だけ開けると、枕元に紗菜がいた。 「客?」 「そう、神崎さんだって」 神崎……神崎? 俺の知ってる神崎さんは一人しかいないけど。 まさか、と思っていると玄関の方から、まさしくその人の声が聞こえてきたのである。 差し入れを置いて帰る、というその声に、俺は慌てて飛び起きて、紗菜の存在なんかキレイさっぱり忘れて玄関へと走った。
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