あの時彼は2

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玄関にいたのは間違いなく慎さんだった。 電話越しであんなに怒ってたのに……そう思うとこれは夢かと思うくらいに嬉しくて。 「来てくれたんすか……」 「あ……うん。一人暮らしだと大変だろうと思ってつい……でも、妹さんがいるなら、帰ります」 「いや、すぐ帰ります、バイトあるはずだし。ああ、でも移したくないから昨日も店行くの我慢したのに……」 顔を真っ赤にしてもじもじし始める慎さんの手を、逃がさないようにぎゅうっと握りしめてしまった。 せっかく来てくれたものを、なんですぐに帰さないといけないのか。 あ、でも風邪が移ったら申し訳ない……なるべく移らないようにするから帰らないで。 「……遊園地、行きたかった。けほっ」 「そんなの、熱が下がったらいつでも……」 つい習慣のように手にキスをしそうになって、咳が出て踏みとどまった。 いかん、それこそ慎さんに移してしまう。 「ちょ……お兄ちゃん?」 と、背後で妹の声が聞こえて、そうだった居たんだったと思い出した。
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